?.「inkstone sheath」と「brush sword」 シーはニェンに説得されたとはいえ半ば強引にロドスに連れ込まれた。シーのボイスやプロファイルには、出かけたくもなければ戦闘になぞ行きたくないという本心がしばしば見られる。 〔資料?ボイス「会話3」〕だから外は行かないってば。呼ばなくていいわ、絶対外に行かない。外の世界はもうどうでもいいのよ。(後略) 〔資料?ボイス「作戦中2」〕鋒落とせば長日墜ち、筆起こせば畳嶂起こる! ?は確認するまでもなく。?は表面的には「我が剣の一振りは太陽すら自在にし、我が筆の一振りは山岳すらも操る」という、天地すら従えてみせんという勢いある呪文の詠唱だ(※8)。だが、かみ砕いて読み解くと「戦にかまけているとあっという間に一日が過ぎてしまう、同じだけの時間を描画にかければ気高い山々のような大作を描き上げられる(のに!)」という解釈も可能であり、ここに彼女の本音が見えてくる。また、先に取り上げた資料?の後半は、裏を返せば「意気が至らなければ、戦場は芸術に成り得ない」ということでもある。 「硯を以て〜」もまた、本来的には「鞘剣よりも硯筆の方が時間をかけ命をかけるに値する」という意味で受け取れるだろう。戦よりも絵画芸術にかまけていたいのだ。しかし、現実はそうもいかない。シーは武器を手にしなければならなかった(※9)。武器を求めるにあたって問題となるのが、水墨を扱うという点である。シーの能力の根幹であり避けては通れない。鞘はともかく、生半可な武器を用いればあっという間に錆びてしまうであろう。鞘に納めたまま抜けなくなる可能性すらある。そこで白羽の矢が立ったのが「越王勾践剣」だった。表面に施された処理の信頼性は、地球世界で2,500年もの長きにわたり腐食を免れていた実績が示していよう。テラ世界での経過年数は不明だが、ここでは「越王勾践剣」と同じく錆びない性質をもった剣としてとりあえず受け止める。 さらに言えば、矛でも槍でもなく「剣」である点も重要だろう。というのも、春秋よりさらに後代になると剣は戦場からはなれ宗教・儀式・呪術的な役割を求められるようになっていったのである(※10)。超越者を象徴するために、あるいは鬼神などの超越的な存在と人とを繫ぐ道具として、剣は求められていった。時代は遡るものの「越王勾践剣」もまた、人を斬る武器としての役割ではなく、超越者を象徴し、副葬品として人と天を繋ぐ役割を与えられたと考えられる(※11)。そういった意味で、術師でありかつ「神」の欠片であるシーとの相性はよいであろう。あるいはテラ世界において、シーの眠っていた遺跡にこの剣は供えられていたのかもしれない(※12)}。 そして、最も重要なことであるが、シーはこれによって「inkstone sheath(硯としての鞘)」と「brush sword(筆としての剣)」を得たのである。 〔資料?英語版・ボイス「昇進1」〕「With an inkstone sheath, one may learn the annals. With a brush sword, one may paint the celestial.」 たとえその身は戦にあろうとも「硯(inkstone sheath)」を用いていれば「春秋を研ぐべし」であり、「筆(brush sword)」を用いていれば「鬼神を訂すべし」なのだ。だからなのだろう、シーの戦闘中のボイスは「描く」ことを中心としている。敵を打ち滅ぼすための武器を手にしながら、我が身は戦に染まることなく、絵画芸術にいそしむがごとく崇高なる境地を保っていられるのだ。 -- [isJt./K8RiI] &new{2021-12-17 (金) 23:35:49
それに、英語版から推察して、本来は「Think A B (AをBとみなす)」の意味でしか使われない「以A為B」を「make A B (AをB(の状態)にする)」にしたギャグの可能性すらあるからね。「ホントに筆から剣を作っちゃったの!?」「うっそー」なんて解釈すら可能。題材として難しいね。 -- [RXvrbbAjWmE] 2021-12-21 (火) 17:06:18